$n$次行列 $A, B$ に対して、以下のことを示してください。 (1) $A, B$ が正則であっても $A+B$ は正則とは限らないことを示す。 (2) ある自然数 $k$ に対して、$A^k = E$($E$は単位行列) が存在すれば、$A$ は正則であることを示す。 (3) $A^2 = A$ かつ $A \neq E$ ならば、$A$ は正則ではないことを示す。

代数学線形代数行列正則逆行列単位行列
2025/6/6

1. 問題の内容

nn次行列 A,BA, B に対して、以下のことを示してください。
(1) A,BA, B が正則であっても A+BA+B は正則とは限らないことを示す。
(2) ある自然数 kk に対して、Ak=EA^k = EEEは単位行列) が存在すれば、AA は正則であることを示す。
(3) A2=AA^2 = A かつ AEA \neq E ならば、AA は正則ではないことを示す。

2. 解き方の手順

(1) A,BA, B が正則であっても A+BA+B が正則とは限らない例を示す。
例えば、A=EA = EB=EB = -E を考えると、A,BA, B は正則ですが、A+B=E+(E)=0A+B = E + (-E) = 0 となり、零行列は正則ではありません。
(2) Ak=EA^k = E が成り立つとき、AA が正則であることを示す。
Ak1A^{k-1}AA にかけると単位行列 EE になるので、つまり AAk1=Ak1A=EA \cdot A^{k-1} = A^{k-1} \cdot A = E です。
したがって、Ak1A^{k-1}AA の逆行列となります。
つまり、A1=Ak1A^{-1} = A^{k-1} が存在するので、AA は正則です。
(3) A2=AA^2 = A かつ AEA \neq E ならば、AA は正則ではないことを示す。
もし AA が正則であると仮定すると、A1A^{-1} が存在します。
A2=AA^2 = A の両辺に左から A1A^{-1} をかけると、
A1A2=A1AA^{-1}A^2 = A^{-1}A
A=EA = E
これは、AEA \neq E に矛盾します。
したがって、AA は正則ではありません。

3. 最終的な答え

(1) 例えば、A=EA=E, B=EB=-E のとき、A,BA, B は正則だが A+B=0A+B=0 (零行列) なので正則ではない。
(2) Ak=EA^k = E ならば、A1=Ak1A^{-1} = A^{k-1} が存在するので、AA は正則である。
(3) A2=A,AEA^2 = A, A \neq E ならば、AA は正則ではない。