平均 $\mu$, 分散 $\sigma^2$ の母集団から無作為に抽出した $n$ 個の標本 $X_1, \dots, X_n$ があるとき、標本平均 $\bar{X}$ を $\bar{X} = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^n X_i$ とする。 (1) $E[\bar{X}]$ を求めよ。 (2) $V[\bar{X}]$ を求めよ。 (3) $\bar{X}$ はどのような分布に従うか説明せよ。 (4) もしこの母集団の分布が平均 $\mu$, 分散 $\sigma^2$ の正規分布であるならば、$\bar{X}$ の分布はどうなるか答えよ。

1. 問題の内容

平均 $\mu$, 分散 $\sigma^2$ の母集団から無作為に抽出した $n$ 個の標本 $X_1, \dots, X_n$ があるとき、標本平均 $\bar{X}$ を $\bar{X} = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^n X_i$ とする。

(1) $E[\bar{X}]$ を求めよ。

(2) $V[\bar{X}]$ を求めよ。

(3) $\bar{X}$ はどのような分布に従うか説明せよ。

(4) もしこの母集団の分布が平均 $\mu$, 分散 $\sigma^2$ の正規分布であるならば、$\bar{X}$ の分布はどうなるか答えよ。

2. 解き方の手順

(1) $E[\bar{X}]$ を求める。

期待値の線形性より、

$E[\bar{X}] = E\left[\frac{1}{n} \sum_{i=1}^n X_i\right] = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^n E[X_i]$

各 $X_i$ は母集団から無作為に抽出されているので、$E[X_i] = \mu$ である。したがって、

$E[\bar{X}] = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^n \mu = \frac{1}{n} (n\mu) = \mu$

(2) $V[\bar{X}]$ を求める。

分散の性質より、

$V[\bar{X}] = V\left[\frac{1}{n} \sum_{i=1}^n X_i\right] = \frac{1}{n^2} V\left[\sum_{i=1}^n X_i\right]$

各 $X_i$ は独立であると仮定すると、$V\left[\sum_{i=1}^n X_i\right] = \sum_{i=1}^n V[X_i]$ である。また、$V[X_i] = \sigma^2$ であるから、

$V[\bar{X}] = \frac{1}{n^2} \sum_{i=1}^n V[X_i] = \frac{1}{n^2} \sum_{i=1}^n \sigma^2 = \frac{1}{n^2} (n\sigma^2) = \frac{\sigma^2}{n}$

(3) $\bar{X}$ はどのような分布に従うか。

中心極限定理より、$n$ が大きいとき、$\bar{X}$ は近似的に正規分布に従う。

(4) 母集団が正規分布に従うとき、$\bar{X}$ は正規分布に従う。

平均 $\mu$, 分散 $\sigma^2$ の正規分布に従う母集団から抽出された標本平均 $\bar{X}$ は、平均 $\mu$, 分散 $\frac{\sigma^2}{n}$ の正規分布に従う。

3. 最終的な答え

(1) $E[\bar{X}] = \mu$

(2) $V[\bar{X}] = \frac{\sigma^2}{n}$

(3) $n$ が大きいとき、中心極限定理より $\bar{X}$ は近似的に正規分布に従う。

(4) $\bar{X}$ は平均 $\mu$, 分散 $\frac{\sigma^2}{n}$ の正規分布に従う。