平均 $\mu$、分散 $\sigma^2$ の母集団から無作為に抽出した $n$ 個の標本 $X_1, \dots, X_n$ があるとき、標本平均 $\overline{X}$ を $\overline{X} = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} X_i$ とする。 (1) $E[\overline{X}]$ を求めよ。 (2) $V[\overline{X}]$ を求めよ。 (3) $\overline{X}$ はどのような分布に従うか説明せよ。

確率論・統計学標本平均期待値分散中心極限定理確率分布
2025/6/6

1. 問題の内容

平均 μ\mu、分散 σ2\sigma^2 の母集団から無作為に抽出した nn 個の標本 X1,,XnX_1, \dots, X_n があるとき、標本平均 X\overline{X}X=1ni=1nXi\overline{X} = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} X_i とする。
(1) E[X]E[\overline{X}] を求めよ。
(2) V[X]V[\overline{X}] を求めよ。
(3) X\overline{X} はどのような分布に従うか説明せよ。

2. 解き方の手順

(1) E[X]E[\overline{X}] を求める。期待値の線形性より、
E[X]=E[1ni=1nXi]=1ni=1nE[Xi]E[\overline{X}] = E[\frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} X_i] = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} E[X_i].
XiX_i は母集団から無作為に抽出されているため、E[Xi]=μE[X_i] = \mu である。したがって、
E[X]=1ni=1nμ=1n(nμ)=μE[\overline{X}] = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} \mu = \frac{1}{n} (n\mu) = \mu.
(2) V[X]V[\overline{X}] を求める。分散の性質より、
V[X]=V[1ni=1nXi]=1n2V[i=1nXi]V[\overline{X}] = V[\frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} X_i] = \frac{1}{n^2} V[\sum_{i=1}^{n} X_i].
XiX_i は独立であるため、V[i=1nXi]=i=1nV[Xi]V[\sum_{i=1}^{n} X_i] = \sum_{i=1}^{n} V[X_i] である。
XiX_i は母集団から無作為に抽出されているため、V[Xi]=σ2V[X_i] = \sigma^2 である。したがって、
V[i=1nXi]=i=1nσ2=nσ2V[\sum_{i=1}^{n} X_i] = \sum_{i=1}^{n} \sigma^2 = n\sigma^2.
よって、
V[X]=1n2(nσ2)=σ2nV[\overline{X}] = \frac{1}{n^2} (n\sigma^2) = \frac{\sigma^2}{n}.
(3) X\overline{X} の分布を説明する。
母集団の分布が正規分布 N(μ,σ2)N(\mu, \sigma^2) に従う場合、標本平均 X\overline{X} も正規分布に従い、
XN(μ,σ2n)\overline{X} \sim N(\mu, \frac{\sigma^2}{n}).
母集団の分布が正規分布でない場合でも、nn が十分に大きいとき、中心極限定理により、X\overline{X} は近似的に正規分布 N(μ,σ2n)N(\mu, \frac{\sigma^2}{n}) に従う。

3. 最終的な答え

(1) E[X]=μE[\overline{X}] = \mu
(2) V[X]=σ2nV[\overline{X}] = \frac{\sigma^2}{n}
(3) 母集団が正規分布に従う場合、XN(μ,σ2n)\overline{X} \sim N(\mu, \frac{\sigma^2}{n})。母集団が正規分布でない場合でも、nn が大きいとき、中心極限定理により、X\overline{X} は近似的に正規分布 N(μ,σ2n)N(\mu, \frac{\sigma^2}{n}) に従う。

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