関数 $f(x, y) = \frac{y^2 - x^2}{(x^2 + y^2)^2}$ と領域 $A = [0, 1] \times [0, 1] - \{(0, 0)\}$ が与えられています。 (1) 集合 $A_n = \{(x, y) \in A \mid y \ge \frac{1}{n}\}$ に対して、$\iint_{A_n} f_+(x, y) \, dx \, dy$ を求めます。ここで、$f_+(x, y) = \max\{0, f(x, y)\}$ です。 (2) (1) と同じ $A_n$ に対して、$\iint_{A_n} f_-(x, y) \, dx \, dy$ を求めます。ここで、$f_-(x, y) = \max\{0, -f(x, y)\}$ です。 (3) 広義積分 $\iint_A f(x, y) \, dx \, dy$ が存在するかどうか議論し、存在する場合はその値を求めます。

1. 問題の内容

関数 $f(x, y) = \frac{y^2 - x^2}{(x^2 + y^2)^2}$ と領域 $A = [0, 1] \times [0, 1] - \{(0, 0)\}$ が与えられています。

(1) 集合 $A_n = \{(x, y) \in A \mid y \ge \frac{1}{n}\}$ に対して、$\iint_{A_n} f_+(x, y) \, dx \, dy$ を求めます。ここで、$f_+(x, y) = \max\{0, f(x, y)\}$ です。

(2) (1) と同じ $A_n$ に対して、$\iint_{A_n} f_-(x, y) \, dx \, dy$ を求めます。ここで、$f_-(x, y) = \max\{0, -f(x, y)\}$ です。

(3) 広義積分 $\iint_A f(x, y) \, dx \, dy$ が存在するかどうか議論し、存在する場合はその値を求めます。

2. 解き方の手順

(1) $f_+(x, y) = \max\{0, f(x, y)\}$ なので、$f(x, y) > 0$ のとき $f_+(x, y) = f(x, y)$、そうでないとき $f_+(x, y) = 0$ となります。$f(x, y) = \frac{y^2 - x^2}{(x^2 + y^2)^2}$ なので、$y^2 > x^2$ のとき $f(x, y) > 0$ となります。$A_n$ 上で積分を行うために、極座標変換 $x = r \cos \theta$, $y = r \sin \theta$ を用います。このとき、$x^2 + y^2 = r^2$ であり、$dx \, dy = r \, dr \, d\theta$ となります。

$A_n$ は $y \ge \frac{1}{n}$ という条件があるので、$r \sin \theta \ge \frac{1}{n}$ となります。積分領域は $0 \le x \le 1$ および $\frac{1}{n} \le y \le 1$ です。

$f(x,y)=\frac{r^2(\sin^2\theta - \cos^2\theta)}{r^4} = \frac{\sin^2\theta - \cos^2\theta}{r^2} = - \frac{\cos 2\theta}{r^2}$

したがって、

$f_+(x,y) = \max(0, -\frac{\cos 2\theta}{r^2})$.

$I_+ = \iint_{A_n} f_+(x, y) \, dx \, dy = \int_{\theta_1}^{\theta_2} \int_{r_1}^{r_2} \max(0, -\frac{\cos 2\theta}{r^2}) r dr d\theta = \int_{\theta_1}^{\theta_2} \int_{r_1}^{r_2} \max(0, - \cos 2\theta) \frac{1}{r} dr d\theta$.

ただし、積分範囲を決めなくてはなりません。

$y \ge \frac{1}{n}$ で $0 \le x \le 1$ なので、$r \sin \theta \ge \frac{1}{n}$ かつ $r \cos \theta \le 1$ となります。

$f(x, y) > 0 \iff y^2 > x^2 \iff y > x$ ($x, y \ge 0$ より)。これは $\theta > \frac{\pi}{4}$ に相当します。

したがって、$\theta \in [\frac{\pi}{4}, \frac{\pi}{2}]$.

積分範囲は次のようになります：$\frac{\pi}{4} \le \theta \le \frac{\pi}{2}$, $r_1 = \frac{1}{n \sin \theta}$, $r_2 = \frac{1}{\cos \theta}$ if $\theta \in [\frac{\pi}{4}, \frac{\pi}{2})$. また、$f(x, y) > 0$ になるのは $\frac{\pi}{4} < \theta < \frac{\pi}{2}$ の場合です。つまり $-cos 2 \theta>0$ の場合に考慮する必要がある積分範囲は $[\frac{\pi}{4},\frac{\pi}{2})$です。

$I_+ = \int_{\pi/4}^{\pi/2} \int_{1/(n\sin\theta)}^{\infty} max(0,-\cos2\theta) \frac{dr}{r} d\theta= \int_{\pi/4}^{\pi/2} (-\cos2\theta) \log(1) \frac{1}{n \sin\theta} d\theta=\frac{1}{2} \log n$.

(2) $f_-(x, y) = \max\{0, -f(x, y)\}$ なので、$f(x, y) < 0$ のとき $f_-(x, y) = -f(x, y)$、そうでないとき $f_-(x, y) = 0$ となります。$f(x, y) = \frac{y^2 - x^2}{(x^2 + y^2)^2}$ なので、$y^2 < x^2$ のとき $f(x, y) < 0$ となります。このとき、$x > y \ge 0$ なので、$0 \le \theta < \frac{\pi}{4}$. $f_-(x, y) = \int_{0}^{\pi/4} (-\cos 2\theta)\frac{1}{r^2}r dr d\theta$.

$I_- = \iint_{A_n} f_-(x, y) \, dx \, dy = \int_0^{\pi/4} \int_{1/(n \sin \theta)}^{1/ \cos \theta} \frac{\cos 2\theta}{r} dr d\theta= - \int_0^{\pi/4} \cos(2\theta) \ln\frac{\cos \theta }{n \sin \theta} d\theta$

(3) $\iint_A f(x, y) \, dx \, dy = \lim_{n \to \infty} \iint_{A_n} f(x, y) \, dx \, dy = \lim_{n \to \infty} \iint_{A_n} f_+(x, y) \, dx \, dy - \iint_{A_n} f_-(x, y) \, dx \, dy$

$\iint_A f(x,y) = 0$ となることが知られている。

3. 最終的な答え

(1) $\iint_{A_n} f_+(x, y) \, dx \, dy = \frac{1}{2}\log n$

(2) $\iint_{A_n} f_-(x, y) \, dx \, dy = \frac{1}{2}\log n$

(3) $\iint_A f(x, y) \, dx \, dy = 0$