$n$次正方行列 $A$ に対して、$A$のすべての小行列 $X$ の中で、$\det(X) \neq 0$ となるものの最大の次数を $m(A)$ とする。 以下の3つのことを証明する。 1. $n$次正方行列の標準形 $B$ に対して $m(B) = \text{rank}(B)$ であることを示せ。
2025/6/19
1. 問題の内容
次正方行列 に対して、のすべての小行列 の中で、 となるものの最大の次数を とする。
以下の3つのことを証明する。
1. $n$次正方行列の標準形 $B$ に対して $m(B) = \text{rank}(B)$ であることを示せ。
2. $A$ を基本変形しても $m(A)$ の値は変わらないことを示せ。これにより、$A$ の標準形を $B = PAQ$ としたとき、$m(A) = m(B)$ を示せ。
3. $m(A) = \text{rank}(A)$ を示せ。
2. 解き方の手順
1. 標準形 $B$ について考える。標準形 $B$ は対角成分に $r$ 個の 1 が並び、残りの成分が 0 であるような行列である。ここで $r = \text{rank}(B)$ である。$r$ 次の小行列で $\det(X) \neq 0$ となるものが存在することは明らかである。また、$r+1$ 次以上の小行列は必ず 0 を含む行(または列)を持つため、$\det(X) = 0$ となる。したがって、$m(B) = r = \text{rank}(B)$ である。
2. $A$ に基本変形を施すことは、正則行列 $P$ および $Q$ を用いて $PAQ$ を計算することと同値である。ここで、$A$ のある小行列 $X$ に対して $\det(X) \neq 0$ が成り立つとする。$PAQ$ の小行列に対応する $A$ の小行列に対して、基本変形を行っても、その小行列のランクは変わらない。
基本変形は、行列に可逆な行列を左または右から掛ける操作に対応する。したがって、 ならば、基本変形後の行列の対応する小行列 についても であり、逆もまた真である。
したがって、 を基本変形しても の値は変わらない。 の標準形を としたとき、 である。
3. $A$ の標準形を $B = PAQ$ とすると、$\text{rank}(A) = \text{rank}(B)$ である。なぜなら、基本変形は行列のランクを変えないからである。
1. より、$m(B) = \text{rank}(B)$ である。
2. より、$m(A) = m(B)$ である。
したがって、 である。