内積の定義を満たすことを確認する。内積の定義は以下の4つの性質を持つ必要がある。
(1) (A,A)≥0 であり、(A,A)=0 ならば A=0 (正定値性) (2) (A,B)=(B,A) (対称性) (3) (cA,B)=c(A,B) (斉次性) (4) (A+B,C)=(A,C)+(B,C) (加法性) (1) 正定値性を示す。
(A,A)=tr(ATA) である。行列 ATA の対角成分は、それぞれAの列ベクトルのノルムの2乗である。トレースは対角成分の和なので、(A,A) は各列ベクトルのノルムの2乗の和となり、これは非負である。 (A,A)=0 となるとき、各列ベクトルのノルムが0となる必要があり、これは行列 A の全ての成分が0であることを意味する。したがって、A=0。 (2) 対称性を示す。
(A,B)=tr(ATB) であり、(B,A)=tr(BTA) である。トレースの性質として、tr(XY)=tr(YX) がある。 したがって、tr(BTA)=tr(A(BT))=tr((A(BT))T)=tr(BAT)=tr(ATB)=(A,B)。 (3) 斉次性を示す。
(cA,B)=tr((cA)TB)=tr(cATB)=c tr(ATB)=c(A,B)。 (4) 加法性を示す。
(A+B,C)=tr((A+B)TC)=tr((AT+BT)C)=tr(ATC+BTC)=tr(ATC)+tr(BTC)=(A,C)+(B,C)。 以上の4つの性質が全て満たされるので、与えられた演算は内積である。